New Group Mission
あらゆる価値を循環させ、 あらゆる人の可能性を広げる
メルカリは2013年の創業当初から強い理念ドリブンの経営を貫いてきました。創業者・山田進太郎氏が掲げた**ミッション(使命)は「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」 (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン)) (メルカリの小泉社長から同社の戦略や将来構想について聞く (2019年2月14日 No.3396) | 週刊 経団連タイムス)というものです。このミッションには「誰もが簡単にモノの売り買いを楽しむことで資源を循環させ、豊かな社会を実現する」という想いが込められており (メルカリの小泉社長から同社の戦略や将来構想について聞く (2019年2月14日 No.3396) | 週刊 経団連タイムス)、創業当初より社員全員で共有されました。加えて、創業メンバーが10人ほどの段階で早くもバリュー(行動指針)**が策定され、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」の3つが定められました (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン)) (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。一般的にスタートアップがバリューを整備するのは成長後期になりがちですが、メルカリでは極めて早期にミッション・バリューを明文化し、経営の軸としたことが特徴です (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。
この3つのバリューは英語で簡潔に表現され、社内の共通言語として日々使われています。「それってGo Boldだっけ?」といった会話が自然に飛び交い、Slack上でもバリューのスタンプが活用されるなど (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン))、メンバーの意思決定や行動の拠り所となりました。また社内合宿を重ねて言葉選びにもこだわったため、社員のみならずユーザーにも認知されるバリューとなり (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style) (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)、採用候補者が入社前からメルカリのバリューを知っているケースも多いといいます (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。このようにミッション「世界的なマーケットプレイスの創造」と3つのバリューによる一貫した理念体系が、創業期からメルカリの組織文化の土台を築きました。
(メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)メルカリ創業10周年(2023年)のキービジュアル。「Unleash」という言葉が象徴するように、新たなグループミッションでは「あらゆる人の可能性を広げる」ことが掲げられた (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。従来のミッションはメルカリ(フリマアプリ事業)のミッションとして継続されている (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。
一方、事業の多角化・グローバル展開に伴い理念体系も進化しています。創業10周年を迎えた2023年2月、メルカリは新たなグループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」 (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)を発表しました。このミッションには、「モノ」に限らず「時間・スキル・デジタルコンテンツ」など無形の価値も含め、テクノロジーで世界中の人々をつなぎ新たな可能性を解き放つ(Unleash)というビジョンが示されています (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報) (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)。創業来のミッションであった「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」はフリマアプリ『メルカリ』のカンパニーミッションとして位置づけられ、引き続き事業ドメインごとの指針として残されています (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。こうしたミッションの再定義により、メルカリグループ全体として循環型社会への貢献と人々の可能性拡大をより包括的に追求していく姿勢が鮮明になりました。
またバリュー体系のアップデートも行われています。従来の3つのバリューに加え、近年新たに「Move Fast(はやく動く)」がグループ共通バリューに追加されました (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報) (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)。これはスタートアップらしくスピードを重視し、迅速な意思決定と実行を促すための行動指針です。実際、「質の高い意思決定のために多様な意見を尊重しつつ、合議にこだわらず素早く決断する」といった具体的行動が示され (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、社内でも**“Move Fast”マインドの浸透が図られました。当初このバリューは新規事業子会社のソウゾウで採用されていましたが (ソウゾウのバリューをもっとも体現した人は?第5回ソウゾウ MVP ...)、現在ではメルカリグループ全体で4つのコアバリューとして定着しています (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)。さらに2020年代に入り、これらバリューを支える組織の価値観として4つのファンデーション(Foundation)も定義されました。「Sustainability(持続可能性)」「Inclusion & Diversity(多様性受容)」「Trust & Openness(信頼と開示)」「Customer Perspective(顧客視点)」**の4領域で、組織風土として大切にする考え方です (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)。ファンデーションは空気のように組織全体で育む土壌と位置づけられ (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、メンバーがバリューを最大限発揮するための前提となっています。これらミッション・バリュー・ファンデーションによって、メルカリの企業理念体系は創業時から現在まで進化を遂げつつ、一貫した軸を保ち続けています。
メルカリの明確なミッションとバリューは、同社の成長戦略や業績にも大きな影響を与えてきました。まず事業拡大の意思決定において、ミッションが羅針盤の役割を果たしています。例えば「世界的なマーケットプレイスを創る」という創業来のミッションに忠実に、メルカリはサービス開始半年後の2014年には米国市場への進出を決断しました (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。日本のスタートアップとして異例の早さで海外展開に踏み切った背景には、「Go Bold(大胆にやろう)」の精神が根付いた企業文化があったと言えます。実際、小泉文明氏(取締役社長兼COO)は**「経営陣が“Go Boldにやろう”と繰り返し唱えることで、大胆なチャレンジが組織に浸透した」**と述べており (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)、その文化が米国進出や新規事業立ち上げといった大胆な意思決定を後押ししました。
その後もメルカリはミッションに沿った果敢な事業拡張を続けています。2019年2月にはスマホ決済サービス「メルペイ」を開始し、CtoC取引で培った信頼基盤をフィンテック領域に広げました (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。2021年10月には誰でもスマホひとつでネットショップを開設できる「メルカリShops」をリリースし、個人のビジネス機会創出に踏み出しています (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。直近では2025年に格安スマホ通信サービス「メルカリモバイル」に参入するなど、新規分野への挑戦も続いています (メルカリ、MVNOとして「メルカリモバイル」の提供を開始)。これらの背景には、「あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションのもと、ユーザーの利便性向上や付加価値創出につながるなら領域を問わず挑むという経営姿勢があると言えるでしょう。
同社の業績や株価にも理念体系は間接的な影響を及ぼしています。2018年6月の東証マザーズ上場時、メルカリは時価総額約7,000億円を記録し、ミッションに共感した投資家から大きな期待を集めました。ミッションが示すマーケットプレイスの成長可能性や循環型経済への貢献ストーリーが、市場からの評価を高めた側面があります。またESG(環境・社会・ガバナンス)経営の観点でも、明確な理念はプラスに働いています。メルカリは創業来の循環志向のビジネスモデルや多様性重視の文化が評価され、MSCI日本株女性活躍指数やFTSE Blossom JapanなどGPIF採用のESG株価指数に次々と選定されています (メルカリ、GPIFが採用する「FTSE Blossom Japan Sector Relative ...) (外部評価・受賞 - 株式会社メルカリ)。2024年時点でGPIF採用6指数中5指数に組み入れられるなど (外部評価・受賞 - 株式会社メルカリ)、上場企業の中でもESG評価の高い銘柄として位置づけられています。これは**「循環型社会の実現」や「多様な人材の可能性を解き放つ」**といったメルカリの理念が具体的な取り組みと成果となり、社外から客観的に認められた証と言えるでしょう。ESG指数への組入れは年金基金など長期投資マネーの流入にもつながるため、株価の下支え要因にもなっています。
もっとも、メルカリの成長過程では理念と現実のバランスを問われる局面もありました。ユーザー急増に伴う不正出品・禁止物の問題では (相談急増!フリマサービスでのトラブルにご注意-個人同士の取引 ...)、**「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」**の精神の下で迅速に対策強化を実施しています。例えば24時間監視体制の構築やAIによる出品チェック導入を進め、安全安心な取引環境の整備に努めました (メルカリ、「貨幣」の出品禁止について説明--24時間体制で監視)。こうした対応力はユーザー信頼の維持に寄与し、結果的に事業の持続的な成長を支えています。2020年前後にはコロナ禍で巣ごもり消費の追い風も受け、メルカリのGMV(流通総額)は拡大、株価も一時高騰しました。パンデミック下でテレワークへ迅速に移行できたのも「人に投資する」文化とバリュー浸透のおかげだと人事責任者は述べています (ミッションについて参考になる企業事例 - 『日本の人事部』) (ミッションについて参考になる企業事例 - 『日本の人事部』)。一方、コロナ後の業績伸び悩みや競争激化で株価が調整局面を迎えた際も、ミッションを軸とした長期視点の経営を掲げることで安易な短期策に走らず、ブランド価値と将来の成長余地を守る経営判断がなされています。例えば赤字事業だった米国版メルカリも、「グローバル展開」というミッション達成のために粘り強く投資継続し、現在では月間利用者数493万人・年間GMV11億ドル超まで成長させました (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。このように企業理念は単なるスローガンではなく、投資家・ステークホルダーとの長期的な約束として機能し、事業拡大と業績維持に影響を与えているのです。
メルカリの企業理念体系は、社内文化の醸成とブランド価値の向上にも大きく寄与しています。まず社内に目を向けると、ミッション・バリューが社員の行動規範として深く浸透しています。創業以来、経営陣はあらゆる場面でミッションとバリューを繰り返し発信し、「同じ言葉を言い続けることが大事。同じことを何度もやって初めてブランド創りが始まる」とまで語っています (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。この粘り強い啓発により、メルカリでは意思決定や議論の際にメンバー自らがバリューを引き合いに出す文化が根付いてきました (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン))。例えば会議で意見が割れた際に「もっとGo Boldにやろう」と背中を押し合ったり、合意形成に時間がかかりそうな時に「はやく動く」ことを優先しようという声が上がる、といった具合です (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)。経営判断から日々の業務まで全ての意思決定を4つのバリューに照らして行うというルールがあるため (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、社員一人ひとりが自律的に判断しやすくなり、スピード感と一貫性のある組織運営につながっています。
さらに人材採用・育成の面でも理念が核となっています。メルカリでは採用基準そのものにバリューを組み込んでおり (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、選考プロセスで候補者のバリューフィットを重視しています。入社後の人事評価も各メンバーのバリュー体現度合いを重視する仕組みにアップデートされました。例えば2021年には人事評価制度を大幅に刷新し、「多様な人材が大胆にチャレンジすることを支援する」新制度を導入 (ミッションについて参考になる企業事例 - 『日本の人事部』)。“ナイスチャレンジ”を称賛する文化づくりのため、失敗を恐れず挑戦した社員を四半期ごとに表彰する仕組みを設けるなど、Go Bold精神を評価・報奨に直結させています (ミッションについて参考になる企業事例 - 『日本の人事部』) (ミッションについて参考になる企業事例 - 『日本の人事部』)。このような制度面の整備もあって、社内では心理的安全性の高い環境が生まれ、社員エンゲージメントも高水準を維持しています。実際、優秀な人材の流入も続いており、ネット業界のみならず金融や消費財出身の幹部も含め多様なプロ人材がメルカリに集結しています (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style) (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。小泉氏も「最後は人が全て。スタートアップこそ採用に一番時間とお金を使うべき」と語り (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン))、ミッションへの共感を切り口に多彩な人材を口説いてきたことがうかがえます。その結果、社員一人ひとりがミッション達成にコミットし、バリューを体現して成果を最大化しようとする組織文化が醸成されました。この文化そのものがメルカリの競争優位となり、イノベーション創出やサービス改善の原動力となっています。
次に対外的なブランド価値・企業レピュテーションへの影響です。メルカリは理念に基づく行動を積み重ねることで、ユーザーや社会からの信頼を築いてきました。その代表例が**「安心・安全な取引環境」の整備です。CtoCマーケットプレイスは信頼が命ですが、メルカリは創業当初から「プロフェッショナルであれ」の精神でこの課題に向き合いました。ユーザー同士のトラブル対応や禁止出品の監視体制を強化し、違反があれば30分程度で削除対応する24時間体制を敷いています (メルカリ、「貨幣」の出品禁止について説明--24時間体制で監視)。また本人確認(eKYC)の徹底や、売上金の不正利用防止策なども次々講じました。その結果、「フリマアプリ=メルカリ」という圧倒的な認知とともに「メルカリなら安心して取引できる」というブランドイメージを確立するに至っています。ユーザー数の拡大とともに一部で「民度の低下」などと揶揄されることもありましたが、同社はトラスト&セーフティチーム**を組織し教育啓発やAI活用で対応し、サービス品質を守っています。この粘り強い取り組みは、「顧客視点(Customer Perspective)」を大切にするファンデーションの表れであり (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、結果的にブランドロイヤルティ向上につながりました。
また社会的責任(CSR)やサステナビリティの面でも、メルカリの理念は企業評価を押し上げています。昨今重視されるSDGs文脈では、メルカリのビジネスそのものが「12.つくる責任・つかう責任」や「13.気候変動への具体的対策」に貢献する好例とされています。同社は毎年サステナビリティレポート(Impact Report)を発行し、自社サービスを通じて削減できたCO2排出量を算出・公開しています。2023年度版のレポートによれば、日米合わせて年間約53万トンもの温室効果ガス排出をメルカリのリユース流通が回避したと試算されています (2023年度版 「Impact Report」(インパクトレポート)を公開)。これは東京ドーム約250杯分に相当する削減効果であり、循環型社会への具体的インパクトとして評価されています。さらに環境省主催の「ESGファイナンス・アワード」では優秀賞を受賞するなど (メルカリ、第3回ESGファイナンス・アワード・ジャパン 環境 ...)、環境配慮の先進企業としての名声も高まっています。このような社会的評価の高まりは企業レピュテーションの向上につながり、ユーザーから選ばれ続けるブランド価値の源泉となっています。
一方で、ミッション・バリューを体現し続けることは企業統治にもプラスの影響を及ぼしています。メルカリでは経営の重要事項を判断する際、「それはメルカリらしいか?」という問いが発せられると言います。たとえば、不祥事リスクのある短期的な利益機会に飛びつくことよりも、「長期的に信頼される存在であるか」を優先する文化があります。実際、2020年には経営陣自ら報酬カットを行い社員の雇用維持を選択したり、2022年にはプラットフォーム手数料の値上げに踏み切る際にもユーザーへの周知と理解醸成に丁寧に取り組むなど、一貫して信頼を損ねない経営判断が行われています。これらは**「Trust & Openness(信頼とオープンさ)」というファンデーション価値観に沿った行動であり (Culture | 株式会社メルカリ - 採用情報)、情報開示やステークホルダー対話にも積極的です。こうした姿勢がIR面でも評価され、2023年にはGPIF委託運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書100社」に選定されました (GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書」に2年 ...)。総じて、メルカリは企業理念を単なる飾りにせず「経営の中心軸」**として据えることで、組織文化を強固にし、ブランド価値と評判の向上に大きな成果を上げているのです。
メルカリはそのミッション・バリューに基づき、多岐にわたる**ブランドアクション(具体的施策や活動)**を展開してきました。ここでは、広告・マーケティング、サービス改善、社会貢献、プロダクト戦略、PR活動といった観点で、理念との関連性が明確な事例を紹介します。
大胆な事業展開とマーケティング: 「Go Bold(大胆にやろう)」の精神を象徴する取り組みとして、メルカリの初期成長期における積極的なテレビCM投下が挙げられます。創業後、プロダクトの完成に通常の倍近い5ヶ月を費やして品質を磨き込んだメルカリは、その後調達資金の大半を使って大量のテレビCMを投入し、一気にユーザー認知とGMVを拡大しました (メルカリの小泉社長から同社の戦略や将来構想について聞く (2019年2月14日 No.3396) | 週刊 経団連タイムス)。当時フリマアプリ競合が10社以上乱立する中、「圧倒的トップシェアを狙う」という大胆なマーケティング戦略を実行できたのは、組織全体がミッション達成のためにリスクを取る覚悟を共有していたからです。また、2019年にはJリーグ鹿島アントラーズの経営権を取得し話題を呼びました。これは単なるスポンサーを超えてスポーツビジネスへの本格参入であり、「新たな価値創造」に挑むGo Boldな戦略でした。クラブ運営を通じて地域コミュニティやグローバルファンとの接点を広げ、メルカリブランドの浸透とユーザー基盤拡大に寄与しています。
ユーザー体験の革新(サービス改善): 「誰もがかんたんに売買できる」というミッションを具現化するため、メルカリはサービス機能の改善にも積極的です。代表例が配送サービス連携「らくらくメルカリ便」の導入です。2015年4月、ヤマト運輸とのシステム連携により出品者はアプリ上のQRコードだけで匿名発送ができるサービスを開始しました (フリマアプリ「メルカリ」とヤマト運輸が提携 発送料金が全国一律に)。全国一律の送料設定や宛名書き不要の仕組みは業界初で、出品・発送のハードルを大きく下げました (フリマアプリ「メルカリ」とヤマト運輸が提携 発送料金が全国一律に)。これによりフリマ初心者や女性ユーザーにも出品行動が広がり、ミッションである「誰もが簡単に売り買いできる」環境づくりが進みました。また2017年には日本郵便とも提携し「ゆうゆうメルカリ便」を開始、コンビニや郵便局から手軽に送れる網羅性を確保しました。さらにAIや先端技術の活用も積極的です。商品撮影画像からカテゴリや商品名を自動推定する機能や、2023年にはOpenAIのGPT-4を用いて出品商品の説明文作成を支援する機能も試験導入しました (メルカリは GPT-4o mini を活用して、出品体験の改善と ... - OpenAI)。これらは**「テクノロジーの力で人々をつなぐ」**という理念そのものの実践であり、出品作業の効率化を通じてユーザーの可能性を広げる取り組みです。
顧客志向のキャンペーン展開: メルカリはユーザー参加型のキャンペーンでも理念を体現しています。たとえばフリマアプリとして日本最大となった2023年には、累計出品数30億品突破を記念した大型キャンペーン「超メルカリ祭」を開催し、出品促進や購入促進につながる施策を打ちました (超売れる!超買える!超ワクワク!総出品数30億超えのメルカリが ...)。ここでは「売れると手数料半額」「抽選でポイント進呈」などユーザーに還元する内容で、単なる利益追求ではなくユーザーの成功体験を増やすことを重視しています(まさにAll for One=みんなの成功のための施策)。また、新規ユーザー獲得のための「メルカリ教室」も全国展開されています。スマホに不慣れなシニア層や主婦層に向け、認定講師が出品から梱包・発送までマンツーマンで教える無料講座を1,200ヶ所以上で開催 (終活や遺品整理に…『メルカリ教室』にシニア世代が続々「“物 ...)。これにより高齢者の方々がメルカリデビューし、終活や生前整理で活用するといった新たな層の可能性が広がっています (終活や遺品整理に…『メルカリ教室』にシニア世代が続々「“物 ...)。まさに**「あらゆる人の可能性を広げる」**ミッションに沿った社会実装と言えるでしょう。
社会貢献・サステナビリティ施策: メルカリは企業理念に基づき、社会課題解決型のプロジェクトも積極的に展開しています。毎年11月のブラックフライデー時期には、あえて新製品を買わずリユースを楽しむ**「グリーンフライデー」キャンペーンを2019年から開始しました。例えば2024年の「メルカリ グリーンフライデープロジェクト2024〜新作ゼロのファッションフェス〜」では、大手アパレル企業など計11社と連携し、不要になった衣類の交換会やリペア・アップサイクル体験ブース、さらには新品を一切使わないファッションショーを開催しました (FUNEE、メルカリ主催「グリーンフライデープロジェクト2024〜新作ゼロのファッションフェス〜」にパートナー企業として参画 | 株式会社FUNEEのプレスリリース)。3日間で延べ900名以上が参加し、サステナブルファッションの楽しさを発信する場となっています (循環型ファッションのカギは企業連携 メルカリ・グリーン ...)。このようなイベントは「捨てずに循環させる」という創業者の想い**を社会に訴求し、消費者の意識変革につなげるブランドアクションです。 (FUNEE、メルカリ主催「グリーンフライデープロジェクト2024〜新作ゼロのファッションフェス〜」にパートナー企業として参画 | 株式会社FUNEEのプレスリリース)グリーンフライデープロジェクトのビジュアル。「新作ゼロのファッションフェス」というメッセージを打ち出し、消費者にリユースの価値を訴求するイベントとなっている (FUNEE、メルカリ主催「グリーンフライデープロジェクト2024〜新作ゼロのファッションフェス〜」にパートナー企業として参画 | 株式会社FUNEEのプレスリリース)。
また、寄付を通じた社会貢献循環も促進しています。2020年には日本財団と協働し、売上金をワンクリックで寄付できる「メルカリ寄付」機能を導入しました (メルカリ×日本財団プロジェクト)。ユーザーが不要品を売るだけで、その売上の一部をNPO等に寄付できる仕組みで、「モノとともに社会貢献が循環する未来を作る」というコンセプトです (メルカリ×日本財団プロジェクト)。実際に集まった寄付金は災害支援や環境保全、子どもの支援など様々な分野に活用されており、メルカリのプラットフォームが社会課題解決にも役立っています。さらに行政との連携による循環促進もユニークな取り組みです。2021年から自治体の不要備品や粗大ごみをメルカリShops上で販売し、公共施設で眠っていた資源を地域に循環させるプロジェクトを展開しています。2023年環境の日には新たに8つの自治体が参加し、累計539点・約260万円相当の公有資産が住民の手に渡り、売上金は地域活性化に活用されました (「環境の日」・「世界環境デー」に合わせて、新たに8つの自治体が「メルカリShops」で “まだ使える”備品や粗大ごみの販売を開始 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。これは行政が抱える廃棄物問題にテクノロジーでアプローチする画期的事例であり、環境省も注目するモデルとなっています (「環境の日」・「世界環境デー」に合わせて、新たに8つの自治体が「メルカリShops」で “まだ使える”備品や粗大ごみの販売を開始 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。このようにメルカリは**「価値の循環を広げる」**という企業理念のもと、民間企業の枠を超えた社会的プロジェクトにも積極果敢に乗り出しています。
プロダクト戦略とイノベーション: プロダクト開発面でも理念との整合性が貫かれています。メルカリの新サービス立ち上げは常に「ユーザーの可能性を広げるか」を基準に検討されています。たとえばスマホ決済のメルペイは、フリマ売上金をリアル店舗やネット決済で使えるようにし、金融包摂を促す狙いがありました。銀行口座を持たない若年層でも信用構築できるよう独自のスコアリングを導入し、誰もがキャッシュレスの恩恵を受けられる世界を目指しています。最近開始した後払いサービスや独自クレジットカード「メルカード」も、ユーザーの購買力や信用力を拡大する取り組みです。さらにR&D組織「Mercari R4D」でブロックチェーンやAIの研究開発を行い、将来的に**「価値の交換」を革新する技術を模索しています (【インタビュー】より多くの人にサステナブルを意識をしてもらう ...)。これらの先端プロダクト戦略は、一見フリマアプリとは離れた領域に見えますが、本質的には「あらゆる価値をなめらかに循環させる」**というグループミッションに沿ったイノベーション追求と言えるでしょう。
PR・コミュニケーション活動: メルカリは自社の理念やカルチャーを社外に発信するブランディングにも注力しています。オウンドメディア「メルカン(Mercan)」では、経営層や現場メンバーがミッションやバリューについて語る記事を多数公開し (メルカリの3つのバリューとワーディングへのこだわり | mercan (メルカン))、透明性のある情報発信を行っています。たとえば経営陣インタビューではバリュー策定の裏側や失敗からの学びを赤裸々に語り、新卒や転職希望者にも社風を伝えています。また、オフィスの会議室名にバリューを冠する(「Bold○○」という名称)などユニークな企業文化も紹介され、メディアから「メルカリはバリュー浸透が徹底している」と評価されました (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)。さらに10周年特設サイト「Unleash」では、過去10年の歩みをインフォグラフィックスで振り返りつつ、新ミッションへのコミットメントをCEOメッセージで発信しました (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース) (メルカリ、「次の10年」の成長に向けた、新たなグループミッションを公開 | 株式会社メルカリのプレスリリース)。これにより社員だけでなくユーザーや投資家にも進化した理念を共有し、ステークホルダーとの価値観の共感を深めています。加えて、社外のスタートアップコミュニティや業界団体に対しても積極的に知見を発信しています。経団連や業界カンファレンスで小泉氏が講演し「サービスには寿命があっても会社のミッションは普遍」と語るなど (〖メルカリ〗社員10人の時点で構築したミッションとバリュー Vol.3 | Signifiant Style)、理念経営の重要性を提唱する存在として影響力を持ち始めています。
以上のように、メルカリは企業理念を単なるスローガンに留めず、具体的なブランドアクションに落とし込んで実践してきました。それぞれの施策がミッション・バリューと有機的に結びついており、結果としてユーザー体験の向上、社会からの信頼醸成、そして社員のエンゲージメント向上という好循環を生み出しています。
最後に、メルカリの企業理念体系に関する主な変更・追加のイベントを、時系列で整理します。創業から現在までの重要な節目と公式発表・資料を以下の表にまとめました。
(注記)上記以外にも、多数のブランド施策・内部施策がありますが、企業理念体系そのものの変化・発信に関わる主要イベントを抜粋しています。
以上、メルカリのミッション・ビジョン・バリュー(企業理念体系)の創業から現在までの変遷と、それが業績・組織文化・ブランドに与えた影響、さらに理念に根ざした具体的な施策について包括的に分析しました。経営トップやカルチャー担当者の視点から見ても、メルカリの歩みは**「理念経営の力」を示す好例と言えるでしょう。明確なミッションと少数精鋭のバリューを掲げ、それをブレることなく組織に浸透させることで、従業員のベクトルを合わせ圧倒的なスピードで事業を成長させました。同時に、循環型社会への貢献や多様性推進など社会的価値**にもコミットし、ブランド力とレピュテーションを高めています。メルカリのケースから得られる示唆は、企業規模や業種を問わず有用です。すなわち、経営理念を単なる額面上のスローガンに終わらせず、事業戦略・組織運営・社会貢献のあらゆる局面で一貫して体現することが、社員の情熱とイノベーションを引き出し、結果的に企業価値を最大化する——この“理念と実践の好循環”こそが、現代の経営において強力な武器となるのです。
あらゆる価値を循環させ、 あらゆる人の可能性を広げる
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